式根島では方言話者は年々少なくなっています。50代、60代となると、日頃からほとんど共通語を話し、親世代と話すときだけ意識して方言を使うスタイルが増えています。その下の世代となると、親世代も方言が少なくなり、今の子供達はほとんど共通語で会話しています。

このように消えゆく言葉となっている方言ですが、貴重な離島の文化資源として伝えていきたいものです。

式根島方言の主な特徴

式根島の方言は、新島本村のことばとほぼ一体です。東京式アクセントを受け継ぎながら、母音のエがイに寄る、語末のラ行が落ちるといった独特の音の変化を持ちます。推量の「ズラ」は伊豆半島や山梨・長野にも共通する表現で、島ことばが本土と深くつながっていることを示しています。また、政治犯や志士、博打打ちまで流された流刑地・新島ならではの武家言葉の影響も見られます。

  • 推量は「〜ズラ/〜ラ」伊豆半島や山梨・長野にも分布する言い方です。
    [例]イクズラ(行くだろう)
  • 「〜しよう」(志向) は「〜ビー/〜ビャー」
  • 誘いかけ は「〜ビージャン」
    [例]ノミナガラ ハナスビージャン(飲みながら話そうよ)
  • 受身・可能は「〜イユ/〜ライユ」
    [例]オイガニモ ヨマユ(私にも読める)
  • 音が融合する:上の動詞と下に付く語がくっついて短くなります。
    [例]アメガ モッチュー(雨が漏っている)、マッチル(待ってる)、ケッチュー(蹴ってる)
  • 語中のラ行が落ちる:「此れ・其れ」が〔コイ・ソイ〕に。落ちた結果、同じ母音が3つ並ぶと長音化します。
    [例]オシリー(お白粉)、カーラ(瓦)
  • 語頭の促音・撥音:「お父さん」を〔ットー〕、「お母さん」を〔ッカー〕、「お前が」を〔ンガ〕のように。
  • 連母音が長くのびる:ai→エー、oi→イー、ae→エーなど
    [例]エーティ(相手)、シンペー(心配)

式根島の方言

※現在使用していない方言も多く含まれます

① 人の名称・呼び方

自分・相手(人称代名詞)

方言標準語の意味
オイわたし・ぼく
オラ・オイラわたしたち
オシリー私達
イシあなた・きみ
※目上には使わない
イシラ/イシラー/イシャーあなたたち・君達
オメーあなた・汝
※敬語(目上に使う)
オメ/オメラ汝/汝等
ウンダラお前等
※ぞんざい・卑罵的な言い方
コノシューこの人たち
~ノシュー~の人たち
アイあれ(人・物)
アイツラ彼ら・あの人達
ワチョー(ワチョーラ)彼(彼ら)
※主に男性
ワイラ・ワチョーラ諸君・君たち
ニンズ友だち
ホーペー同輩
クニノモン/クニノムン本土(東京)の者・都会の人・島外の人

家族・身内

方言標準語の意味
ットーお父さん
ッカーお母さん
ウマ母ちゃん
インジー/インジイおじいさん
ウンバー/ウンバアおばあさん
アンキ長男(兄き・年上の男子)/若者
アニイ/アニー結婚した男・成年男子・男
アマニイ/アマーニーよめ(結婚した女)・成年女子
ネンネ姉さん・長女
モンモ仮親となる子守りをする女の子
モイ/モリ子守り・十歳前後の女の子
ウンマカア/ウマカア子守りの家のお母さん
オヤコ親戚・深いつきあいの家

子ども・年齢・立場・人柄

方言標準語の意味
アカンゴ乳児・赤ちゃん
ニュー幼児(男)
アマ幼児(女)・女の幼児
アンキラ若者たち(よ)
オジイ大人男子
オンパア大人女子
オンバ中年の女・中年の女性
ムンゴ無口な子
ニハチへそまがり
アンピイラクのんき者
ズズナシモン怠け者
ヨーラウドー怠け者
ボーボージーひげぼうぼうのおじいさん・人
カア主婦・女房
トウ主人・夫
イビシゴ名目的養子(擬性親子)エビスコの意。子が少ない家が血縁を超えて親子関係を結ぶ習俗に基づく。

② あいさつ・受け答え

あいさつ・呼びかけ・誘い

方言標準語の意味
ゴゾウサ/ゴゾウサヨありがとう
アイガト・アイガトウありがとう
アットゥチナーナあな尊し・ありがたい
※神仏を拝むときに使う
ゴッソリサマ/ゴッツォーサマごちそうさま・ありがとう・ごくろうさま
イキヨーさよなら
※相手が去っていく側が使う
イロヨーさよなら
※自分が去って行く側が使う
イッチョイさよなら/行って来なさい/元気で居てね
※留まって見送る側が使う。
ヤイ/ヤーイもしもし(すべての呼びかけ)
ウンメェおい
ヤビョ行こう・行くよ
トンジャーピヨ急いで行こう

受け答え・問いかけ

方言標準語の意味
ヤーダいやです
ソーアナー/ソーカそうですか
ソーズラそうでしょう・そうだろう
※推量の語尾(ズラ)
ソーダドンマイそうだけれども
※主に女性が使う
ヒッチュー/ヒッチューヨ知っている
シャーネー知らない
ウンニャちがう・いいえ
ナンジ/ナイなぜ
ドキイどこへ
ゾンマイ/ドンメーだが(しかし)
ソイジャそれでは
フンニカヨー本当にか

③ 感嘆・相づち・程度

方言標準語の意味
ナーエー/ナーエあのねえ
アンナー・アンナエーあのね・あのねえ
※話を切り出すとき
ナーヨーですねえ
※同意を求める語尾
それはそうだが
ジデー/ジテー大体・もとはといえば
ズラ/ズヂでしょう(推量)
ヤーハーたいそう・とても
デーッコたくさん・いっぱい
サンバラバラちりぢりばらばら
カッテーボーちくしょう・どうにでもなれ

④ 名詞(家・暮らし・道具)

家・間取り

方言標準語の意味
ヤカタ分家
オゴス
トグチ玄関
オオト玄関の戸
カミヤカタ台所(お勝手)
タルトメ台所
カマヤカタカマドのある別棟・外の風呂場
アラト入口に近い部屋・手前のざしき
デェ/ゼィ/デイ奥の間・奥ざしき
チョーデー/チョーデェ納戸・かくれざしき
シド家の裏・背戸
キサド家の北側の障子戸
ハンド南側の戸
ジブタカ畳の上
ユリイいろり
インガア/エンガーえんがわ(縁側)
エンバナ板の間の端
インキョ先代が移り住む敷地内の別棟の家親子が同居しない隠居制という生活習慣があった
ニヤア
ナエバ/ネーバ畑(苗場)
タミ貯水タンク

道具・調理

方言標準語の意味
ゴギ・ゴキ食器・ごはん茶わん
サルボウ取手のついた入れ物(水汲み用)
チギ弁当用の飯びつ
ヤギ釣竿
ハブクロ出刃(包丁)
モシツキ焚きつけにする木・燃す木
エンガ竹で編み、まわりを四角い木枠で囲った大根や芋、岩のりなどを干す道具

衣服

方言標準語の意味
ドンダ昔の働き着・雑衣
チャンチャンコそでなし
ヒッチョイロ婦人の袖なし上着
ヒッシュー婦人の礼装の赤い鉢巻
ヨーマサマくつろぎ着

子どもの遊び

方言標準語の意味
アスビンゴままごと
カジミンゴかくれんぼ
ジョウンゴお人形遊び・着せかえ遊び
ボンボ/デックリ肩車

からだ・症状

方言標準語の意味
カッパおでき
ビンタ頭のハゲ
メッパイチョものもらい(麦粒腫)

その他(暮らし・形状)

方言標準語の意味
シンドウブン進贈物・お土産・船頭分
オジージロ船洗い代
ダラ人糞尿
ドブ魚を原料とした自家肥料
メンド
メンドングイ小さい穴の開いた形

⑤ 名詞(島の自然・生き物・地形)

昆虫

方言標準語の意味
アマミゴキブリ
キジラミしろあり
キチギッチョショウリョウバッタ
キンデットウムシオケラ

魚・海の生き物

方言標準語の意味
トント魚※幼児語
ダッコ雑魚
カシカメブダイ(魚)
ナマラ自家用の魚
コナゲイトコブシ
オットンボウマガキガイ

その他の生き物

方言標準語の意味
カマギッショトカゲ
ミミジョミミズ
※ザ行のダ行音化

植物

方言標準語の意味
ミンゴ草木の新芽
ニンジリミンゴ出たてで丸まっている草の芽
ノンノ花(幼児語)
エンガサ/ウンガサ椿の実のまわりの皮がはじけたもの
ハダラ小枝に葉のついたもの/大根の葉のぬか味噌漬け
カー
イビヅエビヅル(山ぶどう)
カアツアケビ

海・漁業・地形

方言標準語の意味
アンド網所・漁業の入江
※網打ちの権利のある海上(縄張り)を指す、漁業社会の重要語
ツシロ魚の集まるところ
ナグシャ
アマ海中の穴
ホト突出した岩石
ゴーロ貝殻
ジブタカ地面
ナムラ群(むれ)
オンダ海山の幸の収穫

方言標準語の意味
キンニョウ昨日
ユンビ昨夜
ヨーサイガタ夕方

天候

方言標準語の意味
アテップキ当たりちらすような強風
テッパツ強い・大きい
※西のテッパツ(とても強い西風)
タイコウニシ太鼓の音みたいな強い西風
ナレー・ナレエ北東の風
サガ北西の風
ニシ・ニシンカゼ西風
イナサ南東の風
ナガシ南西の風

⑥ 名詞(食文化・島の恵み)

方言標準語の意味
セイおかず・菜
ガンダ飯の半煮え
※炊き加減の状態
ニリコ甘藷粉を原料に作る食べもの
※粟を交ぜれば「粟ニリコ」
コーロニさつまいもの切り干しを煮た保存食
ビンス芋のやわらかいもの
プトトロロテン(ところてん)
ヒアカンミ果物が未熟なうちに日に当たって赤くなること

⑦ 名詞(年中行事・信仰・伝統)

信仰

方言標準語の意味
ノウノウサマ神様・仏様
オシンメエ神仏に供えるお米(洗米)
ホーリサマ神主
アットゥチナーナあな尊し(神仏を拝む語)

行事・習わし

方言標準語の意味
イビシゴ擬性親子をつくる行事
エビスコの意。血縁を超えて名目上の親子関係を結ぶ
ソーリー葬式
ダントー/ダントウ墓(卵塔)・墓地
ヒリィ/ヒーリー浜に作った日よけの庇(あずまや)
ヨーバマ家にいると蚊に刺されるので、夕方に浜で夕飯を食べる習わし
ヨショ/ヨシオ夜潮、夜に地鉈温泉などに入ること
オンガヤマ/オンギャマ入梅期に焚きつけ用のツツジの木を切りに行くこと。切った後にさらに採り歩く

⑧ 形容詞(よい・好ましい様子)

人をほめる

方言標準語の意味
テナレーガイイ上手である・手際が良い
マミッテーよく働く・丈夫・健康・頑健
ハバシイ怠けず、油断なく働く
ゴーギえらい(褒め言葉)
キンナリーうらやましい

状態

方言標準語の意味
ニイシイ新しい
ヤッコイやわらかい
テッパツ強い・大きい
※カシカメのテッパツ(大きな・重いブダイ)
チッコイ/チョッピイ/チッチャトちいさい

⑨ 形容詞(悪い・困った様子)

人柄・態度

方言標準語の意味
コソイずるい
コソッカレーずるかしこい
コチャク/コッチャク片よった考え・一人よがり
シカジカシネー/シカジカシネエしっかりしない・きちんとしない・あわただしい
シャーンネ落ち着きがない・あわただしい
オーヒー横柄・身勝手
シャッツラガニクイかわいくない・憎らしい
チャラでたらめ

様子・状態

方言標準語の意味
ヨーイむずかしい・たいへんなこと
フウガワリィ/ノウガワリイみっともない/機械等の調子が悪い
ショーシー恥ずかしい
ジャンコッツラ形が悪い・ごつごつした
カンサーカンサー中途はんぱ
シイッピン中身がない・からっぽ
サッテーネ無意味のこと

体調・身体

方言標準語の意味
カンダリー体がだるい・つかれた
ズスネー病気で気分が悪い
メックンドウ目がみえない

騒がしい・恐ろしい

方言標準語の意味
ダンガーシーうるさい
ウトウトジイ/ウントウトジイうるさい
オッカネーこわい・恐ろしい

⑩ 動詞(日常・海や山の仕事・心情)

基本の動作(ある・いる・する など)

方言標準語の意味
アウある
ネェない
イウいる(居る)
シウする
ジウ出る
ジロヨ出ろよ
ヘーウはいる・入る
ヘーイヨはいれよ
ケーウ帰る
デキュウできる
ヤイユやれる
ヤイーネェできない
キーウくれる
キーチョください
トブ走る

持つ・運ぶ・しまう

方言標準語の意味
オッコ/オコム物を入れ物に入れる
オンモチカヅギ持ったり、かついだり、背負ったり
ヒッサグささぐ・頭上に物を乗せて運ぶ
ガウぶらさがる
ヒッシイ引きさがる・帰る

海の仕事

方言標準語の意味
ダンマウ/ダンマル魚をさばく・魚の腹をひらく
ケーシコム深い海へもぐる・素潜り
セヲツカス波乗りをする
モウセン何も採れない、不漁
モウセンカブリ不漁になってしまうこと

山・畑の仕事

方言標準語の意味
ドブ魚のはらわたを腐らせた肥料・汁
アズ畑の隅
ウナウ鍬で溝を造ること

落とす・転ぶ・滑る

方言標準語の意味
オチョッカス/オイチョーカス落とす・落っことす
オッチョシュー/オチオシュー落ちる
ハチクリケーウひっくりかえる・すっころぶ
フンドピクル大きくすべる
ブックラス打つ・ぶっくらわす

心情・態度

方言標準語の意味
ヤーンナウ嫌になる
チンプリヲカク腹を立てる
アキリゲーツタ/ウンギャーミあきれ返る
アマサレルこどもがはしゃぐ・あばれる・いたずらをする
オドキマドキガサユーまったく驚いてしまう
アマチワカム不満を言う・悪口雑言を言う
アタッシュー当たりちらす
カッサッタさわった
イキャーガイ行ってしまえ ※強い突き放しの言い方
ジジムシ/ジジムセーおじいさんのようにしている
ウッチャースユ/ウッチャースイタ/ワスユ忘れる
ウンゲーシ口答え
ヨーヒンダン無駄話・いつまでも決まらない話
ダーラ/ヨダーウツ横に寝そべる・ダラダラする

うまくいかない

方言標準語の意味
マカタガアワネー間に合わない
ツチガアカネー段どりがうまく行かない・仕事がはかどらない

様子・程度(副詞的な言い方)

方言標準語の意味
カテーニ必ず・毎回
ムリカテーニ無理やりに
デングリマングリすみやかに・どんどん
チャッチャトさっさと
マカタ仕度(したく)

用例

  • オイギ(私の家)
  • オララ ケーロージャ(わたしたちは帰りましょう)
  • イシガワリージャ(おまえが悪いのだ)
  • イシラー ロクジメーニ オキナキャー ダメダヨ(お前達は6時前に起きなきゃだめだよ)
  • アイガソウイッタド(あの人がそう言ったよ)
  • オイギノアマニイダヨー(うちのよめさんです)
  • アノイートイク(あの家へ行く)
  • アンナーエー ソイジモッチ ナーエー(あのね、それでね)
  • チーチッチ(連れてって)
  • ヤイ、イシャー ドキーィク(ねえ、あなたはどこへ行くの)
  • オッカネーカラ オラ ヤーダ(怖いから私は嫌です)
  • ヒッチーターナー?(知っていましたか?)
  • ナンジ イシャー ダマッチュー(なぜ君は黙っているのか)
  • ヤーハー リッパダーナー(とても立派ですね)
  • デーッコ クイヨ(たくさん食べな)
  • ウッチャースイチータヨー(大事なことを忘れてた)
  • ヨーイナ コンダ(たいへんなことだ)
  • スッペーカラ、ウッチャウビーヨ(酸っぱいから捨てちゃおう)
  • ソーシバ イージャー(そうすればいいでしょう)
  • ダイカイウナ、イネーナ(どなたかいますか、いませんか)
  • イシャー コンナクトヲ ヤイユナ?(あなたはこんなことができますか?)
  • ゴショウアンピイラク(何も考えてないのんきな人)

ちなみに当サイトの「式根島で何しよう?」コーナーの見出しに使われている方言の意味は以下のとおりです。

最後に

方言には、その土地に生きた人々の暮らしと歴史が刻まれています。

式根島の言葉をたどれば、「アンド(網所)」や「モウセン(不漁)」に漁業を糧とした暮らしのあり方、「インキョ(隠居制)」や「モンモ(仮親、子守り親)」など家や生活を守り継いだ共同体の姿が見えてきます。推量の「ズラ」が伊豆や甲信と共通することは、本土と深く結ばれていた証でもあります。

方言を知ることで式根島をとらえる解像度が高くなり、式根島の自然や風景を「島の文化」として味わう喜びをもたらします。島に暮らす人には記憶を未来につなぐ手がかりとなります。消えゆく言葉を守り伝えることは、式根島に対する愛着をより一層深める手立てとなるのです。

参考文献

式根島開島百年史:式根島開島百年を記念する会 編/出版者新島本村/出版年月日1987.5

伊豆諸島方言の研究 : 著者 平山輝男 編/出版者 明治書院/出版年月日 1965

しきね : 人・自然・歴史: 出版者 新島本村立式根島小学校昭和60年度卒業生/出版年月日 1986.3