式根島の島民が昔から親しんでいた秋の味覚と言えば、エビヅル、アケビ、ムベなど山の果実です。当サイトでたびたび引用している式根島開島百年史にはこうあります。

秋になると、また趣も異なり、モチノ木(シマモチ)の皮をはいでモチをつくり、メジロを捕ったり、海岸沿いにあるグミ取りをした。ツルグミ、マルバグミ(磯ぐみ)、チギの実取り(ホルトノキ)これらを食い過ぎるとフン詰りになったりすることもある。またアスナロウの実(イヌマキ)やイビズ(エビヅル)取り、シイの実(スダジイ、ツブラジイ)拾い、ヤマ芋(ヤマノイモ)掘りに興じた。しかし何といっても秋の味覚はウビ(ムベ)とカアツ(アケビ)である。子供たちは山を駆けずり回り、一房に五つぐらいついた赤ウビを取るのが自慢であった。立派なものは仏壇や十五夜などに供えた。今ではカラスに先回りされてがっかりすることが多い。

-式根島開島100年史より引用

この記事でそれらの秋の味覚に迫ってみましょう。

シチトウエビヅル(イビズ/ヤマブドウ)

まずは山ブドウこと「イビズ」です。正確には、この山ブドウは「シチトウエビヅル」と言う、本土に自生する「エビヅル」の変種となります。「エビヅル」は本土の山地に生える「ヤマブドウ」より小型になりますが、「シチトウエビヅル」は本土の「エビヅル」より大型になるのが特徴です。

式根島では「イビズ」と呼び、子供たちがそのままおやつに食べたほか、お月見の飾りに添えました。

ミツバアケビ(カアツ)

ミツバアケビが式根島で普遍的にみられます。実が熟す時期はムベよりもやや早く、熟すとパカット割れて、白くやわらかな果肉が現れます。優しい甘味があり、日本全国で親しまれる秋の味覚です。果肉を種ごと頬張り、残った種を口から地面へ吹き出すのが、昔ながらの食べ方です。

ムベ(ウビ)

ムベは、式根島で「ウビ」と呼ばれています。アケビの仲間ですが、熟しても果皮が割れず、葉を一年中つける常緑性の植物です。実はアケビよりも早い時期に熟します。

『式根島開島百年史』には、いくつも房になった赤いウビを見つけることが子どもたちの自慢であり、立派な実は仏壇や十五夜に供えられたと記されています。

海に隔てられ、自給自足に近い暮らしが長く続いた式根島。野山の恵みは、貴重な食べ物であると同時に、子どもたちの遊びや季節の行事を彩る存在でもありました。イビズ、カアツ、ウビ。島に残る呼び名には、秋の山を駆け回った記憶と、自然の恵みを分かち合ってきた暮らしの面影が息づいています。

[注意]式根島の山や土地は島民の私有地です。無断立入りや採取はできません。