春から初夏は、式根島ならではの山の味覚が目白押しの楽しい季節です。なかでも甘~い桑の実は昔から式根島にたくさんあり、子供たちのうれしいおやつでした。今でも一部の島民は収穫してジャムづくりをして楽しんでいます。今回は、式根島の桑の実の採取風景から食べ方までご紹介いたします。同じ時期に採れるマダケやキイチゴ、オオシマザクラのサクランボのお話もオマケにどうぞ!
式根島と桑の木の歴史
もともと、式根島にはハチジョウグワ(八丈桑)という野生の桑があり、鳥がその実をついばんで島内各所に広がっていました。島民は、畑や家屋の風よけとしても桑の木を植え、その桑を利用して蚕を飼って主に自家用の絹糸をとっていました。
昭和の初期からは、桑畑を用意して蚕の原産種を育てる生糸採りが産業化されましたが、1970年代半ばから民宿経営が島の中心的な事業となって母屋が使えなくなったり、人手の不足、生糸の価格下落、若者がやりたがらないなどの理由で島の養蚕の歴史は終わりました。
子どものおやつ「カー」
さて、そんな式根島の産業史の名残の桑の木は、5月から6月にかけて色づく貴重な果実として島の子供たちのおやつでもありました。島の方言で桑を「カー」、桑の実は「カーの実」と言います。学校の帰り道、遊んでいる間、子供たちは手や口を紫色に染めながら夢中で食べたものでした。

桑の実の採り方
今回は子供のころから今に至るまで、野山や海から食の恵みを得る達人の島民に案内をしてもらいました。もちろん、自然薯名人です。
式根島の桑の木は一部はヤマグワとの雑種もありますが、その変種であるハチジョウグワが基本です。個体差があるので、なるべく大きな実がおすすめです。
桑の木は10m以上になります。下の方の枝の先を何かでひっかけて引っ張り下ろしながら採ると効率的です。真っ黒に熟したものはすぐ枝から外れてしまいますので、傘などを逆さにして枝の下に広げ、ゆすって落としてもよいでしょう。


この日は名人の自宅の裏斜面にある育ちすぎて邪魔になった桑の木を、大胆に切り倒して収穫。



赤い未熟な実は毒があるわけではありませんが、全くおいしくないので、必ず真っ黒くなった完熟の実を選びましょう。

これくらい黒光りしているものが上等です。
桑の実の食べ方と味わい
桑の実の食べ方はいろいろあります。
- 洗ってそのまま生食
- ジャムにする
- 果実酒
- スムージーなど
味わいはしっかり甘くてコクがあり、酸味は控えめ。種はほとんど気になりません。
ちなみに、桑の実は、欧米では「マルベリー」と呼ばれアントシアニンやビタミンが豊富なスーパーフード(機能性食品)、中国では「桑椹(そうじん)」といって薬膳に使われる健康食材です。
桑の実料理を実食!
今回採取した桑の実は、果実酒と料理に使いました。
マルベリー酒(桑の実のブランデー漬け)
収穫した桑の実はよく洗って乾かしておきます。消毒した瓶とブランデー、氷砂糖を用意します。

瓶に桑の実と氷砂糖を交互に入れてブランデーをそそぐだけ。寝かせるとコクが出ますが、1日ほどでも飲めます。


氷をひとかけらいれてロックで!うまい!かき氷にかけてもいいかも(酒飲みの発想)
豚ロースの赤ワイン煮/マルベリーソース
せっかくですから夕食の一品を作りました。フレンチの定番、肉の赤ワイン煮はプルーンやドライフルーツをアクセントに使うことが多いのですが、桑の実でやってみましょう。ついでに畑の新玉ねぎをどっさり使います。

作り方は簡単。
- 塩コショウをすりこんだ豚ロースを油をひいたフライパンで両面焼いて取り出す
- 同じフライパンに玉ねぎとバターを入れ炒める。
- 軽く火が通ったら赤ワインと桑の実、少しの酢(ワインビネガーなど)と砂糖を入れて1の肉を戻し、軽く煮詰めて出来上がり。煮汁を別にとって煮詰めて濃いめのソースにしてもOKです。
15分くらいでできますが、肉はちゃんと柔らかくなります。ワインがすすむ間違いないビストロメニューです。
その他の収穫
マダケ
さて、この日は島の自生ではありませんがマダケも採れました。このマダケは3、40年前に名人が植えたものです。今では周りの人がもらって喜ぶ初夏の楽しみになっています

マダケはアクが弱く、30分で煮えるので手軽です。


桑の実と揃ってこんなに収穫できました。

キイチゴ
翌日にはキイチゴ(ハチジョウイチゴ)も!こちらも甘いイチゴです。

オオシマザクラの実(サクランボ)
続いて、オオシマザクラの実が色づきました。オオシマザクラのサクランボはソメイヨシノより大きく、甘みが強く食べられます。




自然薯名人が60年前の思い出話をしてくれました。
「小学校の敷地に美味しいサクランボがなる木があって、小学校6年生が上まで登って取る係だった。先生は身体が大きいから木に登れなかった。下の学年の子どもたちは口を開けて待っていた。6年生が掃除のバケツに2杯も取って降りてくると、口の周りが紫に染まっていた。自分は木登りもうまかったし、早く6年生になりたいと思ったものだ。」
海に隔てられた島暮らし。時化れば物流が途絶える不便さはありますが、四季折々に手に入る海山の恵みを、上手に暮らしに取り入れて楽しむ知恵が息づいています。
[注意]式根島の山や土地は島民の私有地です。無断立入りや採取はできません。
