式根島でも知る人ぞ知る春の味覚が「タケンコ」です。新島のJAでもたまに出荷されているので、地域の食文化であったことは間違いありません。式根島では例の山菜名人が楽しみにしていますが、消えゆく文化の一つといってよいでしょう。

もともと、伊豆諸島ではタケノコの類を好んで食べていました。有名どころですと八丈島のタコウナ、三宅島のニガタケがあります。

式根島で食べているタケノコの正式な種(学名)はさだかではありませんが、式根島では「タケンコ」「メダケ(女竹)」と呼んでいます。味わいはクセがなく、そのままトースターで皮ごと焼いて食べられるほど。ちなみに、畑周りに多い、さやえんどうの支柱に利用されている笹は「オダケ(男竹)」といい、こちらは苦いので食べません。三宅島のニガタケと同じものかは不明です。

また5月に入ると、マダケを食べます。こちらは島外から食用にするために移植したものになります。本土で一般的なモウソウチクも自生はありません。

タケンコ採り

さて、式根島のメダケは一番多いオダケに比べ、葉が大きく立派です。4月~5月にかけて、伸び出た30~40㎝ほどのタケノコをポキリと折り取って収穫します。密集した笹薮をかき分けながら、なるべく太くて柔らかそうなのを選びますが、なかなか大変な作業です。

タケンコの下処理

大量に採ったタケンコは、時間が経つにつれ、下の方から堅くなってきますので、なるべく早く外皮を剥いてゆでてしまいます。先端は細くて食べられませんので、山菜名人は見当をつけて先にカットしてしまい、皮に包丁で切り目を入れて、くるりと剥きとる方法をとっています。二人で分業すると早く終わります。

剥いたタケンコは熱湯で30分も茹でれば食べられます。アクがないので米ぬかなどは必要ありません。

早い時期なら虫もほとんどいない

タケンコの食べ方

いろいろありますが、まずはタケノコご飯!

オカカと一緒にさっと炒め煮にした土佐煮も素敵な常備食です。

島で採れたタラの芽や山ブドウの葉など季節の山菜と盛り合わせた天ぷらに、式根名物の養殖真鯛「式根鯛平君」と春野菜と合わせたフランス料理・エチュベなど大活躍のタケンコです。春の鯛は「桜鯛」といって味が良い旬であることが知られており、寿司屋や懐石料理でも珍重されていますので、鯛とタケノコは「季節の出会いのもの」ということになります。

さて、式根島のタケンコは、長野県や東北で有名なチシマザサ(ネマガリタケ)に外見と風味が似ています。そして、山菜取り名人は、このタケンコをサバの水煮缶と一緒にみそ汁にするのが一番好きなんだそうです。こちらは、まさに長野県の郷土料理「たけのこ汁」と同じスタイルとなっています。

このように日本全国に広がる古来から細竹の食文化が、ここ式根島にも息づいています。式根島には熊がいませんので、熊と奪い合いにならずに済むのは大変よいことです。

最後に

式根島の山や土地はほとんどが島民の私有地です。無断立入りや植物採取はできませんのでご注意ください。