
ハチジョウグワ

伊豆諸島に自生するクワ科の落葉高木。本州を含む日本列島のヤマグワ Morus australis Poir.に似るが、樹高は高く幹も太い。葉は大人の手のひらほども大きく、厚みがあって表面に強い光沢(ツヤ)がある。葉の縁にはとがった重鋸歯がある。葉には切れ込みがあるものとないものがある。若い個体や下の枝の葉では深い切れ込みがあることが多いようだ。雌雄異株。春に淡黄緑色の尾状花序をつける。初夏に赤から黒紫色へと熟す果実は甘く美味。
ハチジョウグワ 今むかし
マグワやヤマグワと同様、ハチジョウグワもカイコの餌になります。式根島をはじめとする伊豆諸島では、昔は養蚕業のためにあちこちに植えられていました。またこのハチジョウグワの実は貴重な山の恵みとして、島の地域文化に深く根ざしていました。本土でヤマグワの実(長さ1〜1.5 cm)を見慣れている人は、ハチジョウグワの実の大きさ(長さ1.5〜2.5 cm)に驚くと思います。生で食べても、ジャムや果実酒にしても美味しいので、機会があったらぜひ味見してみてください。
有用な在来植物のハチジョウグワですが、近年、街路樹や庭木としてフランスの地中海沿岸などで人気のようです。そう聞くと心配になるのは外来種問題です。ハチジョウグワは庭木としておとなしくしている植物ではなく、鳥によって種子が散布され野生化する可能性があります。実際、荒地や河畔林に実生木が出現しているとのことで、分布拡大が心配なところです。
DATA
| 和名 | ハチジョウグワ |
| 学名 | Morus kagayamae Koidz. |
| 分類 | クワ科 Moraceae |
| 大きさ | 樹高 10 m、葉の長さ 20 cm、集合果の長さ 1.5〜2.5 cm |
| 好む場所 | 林縁、伐採跡地、道端など日当たりのよい場所 |
| 式根島で見られる場所 | 林縁、海岸、家の周辺 |
| 分布 | 伊豆七島、伊豆半島南部 伊豆半島、相模湾沿岸、房総半島にはハチジョウグワとヤマグワの中間型と思われる種がある |






参考文献
勝山輝男(2019)「ヤマグワ」「ハチジョウグワ」in 『山渓ハンディ図鑑3 樹に咲く花 離弁花1』第4版、石井英美・崎尾均・吉山寛ほか著、山と渓谷社、pp. 316-319.
Morus kagayamae Koidz. in Jeanmonod D, carolina (2015). Notes à la flore de Corse, XXV. Plazi.org taxonomic treatments database. Checklist dataset https://doi.org/10.15553/c2015v701a10 accessed via GBIF.org on 2026-05-23.
米倉浩司(2016)「ヤマグワ」「ハチジョウグワ」in『改定新版 日本の野生植物 2』大橋広好・門田裕一・邑田仁・米倉浩司・木原浩 編著、平凡社、p. 340.
米倉浩司・梶田忠 (2003-) BG Plants 和名-学名インデックス(YList),http://ylist.info(2026年5月23日閲覧)
書いた人

こんにちは。神田外語大学で環境科学と生物学を教えている飯島明子です。学生のころ巻貝の調査で通った式根島に、また訪れるようになりました。島での私のあだ名は「シッタカの姉ちゃん」(磯にすむ小さな巻貝を島ではシッタカと呼びます)。式根島の生き物を紹介しています。
