
オオバヤシャブシ

落葉小高木。春、長さ4〜5 cmの黄色い尾状の雄花序が新葉とともに出現して花粉を散らせる。道端に落ちている雄花序は毛虫のように見える。雌花序は小さいが、熟した果穂は2 cmほどの大きさで黒く広楕円形、葉を落とした後も翌年まで残って目立つ。堅果は扁平で小さく、広い翼(よく)があって風で散る。葉は卵形で先端はとがり、側脈は12〜16対ではっきり平行に並ぶ
伊豆諸島を代表する先駆植物(パイオニア植物)です。根に共生する放線菌(フランキア)による窒素固定能力を持ち、火山活動や土砂崩れなどで植生が破壊された貧栄養な土地に真っ先に侵入して素早く成長します。砂防緑化樹として植林されるようになったため、全国的に増えました。伊豆諸島では”ハンノキ”と呼ばれ1)、かつては薪に使われました。アシタバ畑に日陰を作るため2)、また共生菌による肥料効果も期待されて植えられています。
果穂は古くから黒色の染料として利用されてきました。ヤシャブシという植物の名そのものが、”夜叉”(黒)”五倍子”(黒色染料に用いた虫瘤)の意味で、特に葉が大きいので”大葉夜叉五倍子”と名付けられました。
窒素固定で土壌を豊かにし、火山や崩落地の森の再生を助け、島の人々の暮らしとも密接な関わりをもつオオバヤシャブシですが、同時に深刻な花粉症・食物アレルギー(PFAS)の原因樹木でもあります。式根島では1月~GWあたりまで花粉が飛散するので、カバノキ科アレルギーの方は本土と同様の対策が必要です。
1)オオバヤシャブシはハンノキ属なので、グループとしては正しい呼び名です。
2)アシタバは適度に遮光した方がよく育つので、樹下で栽培することがあります。
DATA
| 和名 | オオバヤシャブシ(大葉夜叉五倍子) |
| 学名 | Alnus sieboldiana Matsumura, 1902 |
| 分類 | カバノキ科 Betulaceae |
| 大きさ | 5 ~10 m程度 |
| 好む場所 | 暖地の海岸や崩壊地 |
| 式根島で見られる場所 | 日当たりの良い斜面や畑地の周辺 |
| 分布 | 本州(福島県〜紀伊半島)の太平洋側、伊豆諸島 |





参考文献
有田孝司(2021)愛媛県今治市における花粉症、花粉-食物アレルギー症候群・口腔アレルギー症候群の実態調査。愛媛医学, 40(1), pp. 24-34.
根本智行(2016) 「オオバヤシャブシ」in『改訂新版 日本の野生植物 3』平凡社 p. 109.
山中高史、岡部宏秋(2008)わが国に生育する放線菌根性植物とフランキア菌。森林総合研究所研究報告, Vol.7, No.1(No.406), pp.67-80.
米倉浩司・梶田忠 (2003-) BG Plants 和名-学名インデックス(YList),http://ylist.info(2026年6月14日閲覧)
吉村史郎、小笠原寛、中原 聡、藤谷哲造(1995)芦屋市におけるオオバヤシャブシ(ハンノキ属)花粉症の疫学調査。アレルギー, 44(6), pp. 602-608.
書いた人

こんにちは。神田外語大学で環境科学と生物学を教えている飯島明子です。学生のころ巻貝の調査で通った式根島に、また訪れるようになりました。島での私のあだ名は「シッタカの姉ちゃん」(磯にすむ小さな巻貝を島ではシッタカと呼びます)。式根島の生き物を紹介しています。
